*

 石造りの階段が隙間風を吹き下ろす。
 その僅かな空気の流れは、驚いたことにほんのりと冷たかった。
 外は灼熱の砂漠。元はそこから流れ込んだ熱気だが、地下に至るまでにここまで冷えるものだとは、階段を下っていたコルッシュにも意外だった。
 彼が手にした輝薔薇(きばら)の光が、仄暗い階段を漆黒の闇から浮かび上がらせていた。

「やっぱ地面に生えちょるより、こう手に持って使っちょー方がお似合いけんね」
 砂漠を行く道中、散々自生しているのを見てきた輝薔薇、その白黄の光を放つ水晶を器用に指先で回しながら、コルッシュは一人、地下遺跡の階段を一歩、また一歩と下りていく。
 クロファリの地下遺跡。その殆どは砂に埋もれてしまったが、こうして村の地下に入れる空間が僅かに残っていた。
 ただ、クロエの長老が言うには、その空間ももう長くは保たないらしい。
 コルッシュの足下にも砂が流れ込んでいて、どうにも足下が覚束(おぼつか)ない。少しでも振動を与えれば、砂が下へ下へと流れていく。地下遺跡の空洞は年々砂に侵され埋まっているのだ。
 砂が流れる音だけが静かに鳴り響く地下空間。砂漠にしては心地よく冷たい。そして重い空気が厳かな心象を醸し出す。
 地下へと下る階段は、村の外周を取り囲む岩壁と同じく継ぎ目がどこにも見当たらない。一枚岩から掘り出した構造物だとでもいうのだろうか。
 コルッシュはその不可思議な壁に手を触れる。体温が根こそぎ奪われるようで冷たく気持ちいい。
 こんな涼しい地下に一度入ってしまうと、外の砂漠になんて戻るのが馬鹿らしい。
 それなのに、クロエ族は地下に住むことなく、灼熱の日光が降り注ぐ遺跡の上にわざわざ干し煉瓦の小屋を建てて住んでいるとは、なんともはや偏屈な一族である。
 オーディの聞き分けのないところは、まさにその血脈の影響かもしれない。
 そんなことを考えながらコルッシュが階段を下りていると、突然に階段が途絶え、行き止まりになる。階段が砂に埋もれて塞がっているのだ。
「こりゃ、さっきの横穴じゃきにね」
 独り言を漏らすと、踵(きびす)を返すコルッシュ。
 彼の顔には焦りもなければ期待もない。古代の遺跡の中を行くというのに、単に散歩するかの如く、ふらふらと階段を戻り、上り始めた。
 コルッシュ達がこのクロファリ村に滞在を始めて、もう四日になる。
 その間、砂漠を約二週間も縦断したことによる体の疲れを抜くと共に、ケルケ達はクロファリ村にある地下遺跡の調査を行っていた。
 コルッシュは遺跡の中で調査を行っているはずのケルケとミルミーアを探して地下に降りて来たのである。
 コルッシュも遺跡調査を手伝えればいいのだが、傭兵のコルッシュには古代の遺物がどうだとか、難しいことは何もわからず、このところ暇そうにしていた。
 階段から先程は通り過ぎた横穴に入ると、天井の高い空間に出る。
 その広い空間は何とはなしに礼拝堂に見える。遙か昔に作られた遺跡、その真の使用目的がわかるはずもなく、それは単なる想像に過ぎない。
 造られた頃には大勢の人が集まる場所だったのかもしれないが、今では単なる地中の空洞。物寂しいものだ。
 その黒洞々(こくとうとう)とした闇に目を凝らせば、僅かに弱々しい光が見えた。

「おっ。おったね。ケルケのとっつぁん!」
 コルッシュが声を上げた瞬間、背後で物音がした。
 傭兵らしい俊敏な動きで、コルッシュは反射的に飛び退く。
 しばしの緊張。無手の拳を構えたまま、その眼差しは音源を探した。
 手にした輝薔薇の明かりをかざしてみてば、足下にどこからともなく砂が流れ込んできていた。
 天井から砂が漏れ出たのだろう。
「ですから、地下で大声を出すのおやめないと言ったではないですか」
 暗がりの中から声だけが聞こえてくる。それは確かにケルケ・カナトのものだった。
「ちゃんと声は抑えたきに。この地下、危ないがやね?」
「確かに、いつ崩落してもおかしくはありませんよ」
 姿が見えぬ者とのやり取りに、コルッシュは少し奇妙な感覚を覚えた。耳を澄ませてみれば、砂地を引きずるような足音が近付いて来ている。
「確かにこの遺跡は古い。しかし我々の求めている物ではないようです」
 弱々しい光が闇に揺れ浮かぶ。それはコルッシュの手にした行燈(あんどん)と同種の光。輝薔薇が闇に呼応して吐き出す白黄の光。ただ、闇の中にあるその光は今にも押し潰されそうなほど、か弱いものだった。
「替えの輝薔薇じゃき」
 そう言って、コルッシュは手にしていた輝薔薇を闇に浮かぶ小さな光に放り投げた。
 光の帯が暗闇の中、高い天井に届かんばかりに放物線を描き、宙で止まった。
 その柔らかい光に子供の顔が浮かぶ。ケルケの従者であるミルミーア・リファだ。
 二人に新しい明かりを渡せたと見ると、コルッシュは後ろ腰に付けた巾着(きんちゃく)から自らが使う輝薔薇を取り出した。
「オッサン! こんな暗闇で投げて寄こすなんて非常識過ぎ!」
 甲高い声を上げてミルミーアが文句を言う。
 そんな口の悪さはいつもの通りなのだが、コルッシュはそれを無視して天井を見上げた。それはケルケも同じく。何事かわかっていないミルミーアだけが何事かと口を開けたままで立ち尽くす。
「うひゃ!」
 突然、首筋に何かを感じ、ミルミーアは飛び上がる勢いで驚いた。その声が地下の閉空間を幾度も反射して響いていく。
 地下に溜まった砂の震動が微細な音を立てる。天井から落ちてきたのも砂。ミルミーアは慌てて首筋に入った砂を払い除ける。
「ミル、静かに」
 口元に人差し指を添えたケルケの小さな声。それにミルミーアは無理に黙ったまま、何度も首を縦に振った。
 別に黙る必要はないけん、そんな冷やかしの言葉が脳裏に過ぎったが、コルッシュはあえて何も言わず無言のまま、二人のいる方へと歩み寄っていく。
「助かりました。もうすぐで灯りが切れるところでした」
「何か見付かっちょうか?」
「いえ、何も。本当にここには何もありません。もう千年以上、村がある場所です。それほど期待していませんでしたが、ここまで何もないとは……」
「長老さんの話じゃ王族の墓地じゃきに。何もないとは調子抜けぜよ」
「王族?」
「そういえば、長老から話を聞いていたときミルはいませんでしたか。なんでもこのエルトが砂漠になる以前の遙か昔、この地に栄えていたという巨大な国があったとか。その国の王がこの地下、もう砂で埋まってしまった場所に埋葬されていると村の伝承にあるそうです。私はその伝承は眉唾だと思いますけどね」
「どげんしてじゃ? この村の伝承は地神を祀ったもんで、おまんらそれを求めて来たがやな。じゃけん、ここの伝承は信じられんとね?」
「いえいえ、そういうわけではないですよ。恐らくこの村に伝わる『白の塔』の伝説は本物でしょう。しかし、口伝(くでん)の伝承話というものは、真実以外のことが往々にして混ざるものです。私の知る限り、エルトに国があったという話は聞いたことがありません」
「ヤドリ図書館の主とも呼ばれるケルケ様が知らないんじゃ、その伝承とやらの方が怪しいよな」
 ミルミーアの言うとおり、ケルケ・カナトはムルトエ王国一の蔵書量を誇るヤドリ図書館の研究員だ。そしてケルケはムルトエにある資料を全て飲み込んだ男とまで言われた人物。
 それが遙か昔とはいえ、国の栄滅を聞き及んだことがないと言うのだ。それならば、こんな僻地の伝承の方を疑うというのが筋だろう。
「よく考えればわかることです。この地に人が治める国があったとすれば、その国は神が住まう『白の塔』をも、その手中に収めていたことになります。そんな国の伝説が世に広まらないはずがない。恐らくはクロファリ村がこの遺跡の上に立っていることに箔を付ける為、歴代の族長の誰かが、伝承に付け加えた法螺話でしょう」
「そなんものかいね」
 さして感心のないコルッシュはあっさりした言葉を返す。財宝眠る遺跡ならともかく、遺物すら見付からない遺跡に傭兵は用がない。
「それでオーディは?」
「そうじゃきに、それを知らせに来たじゃけん。北の砂嵐が収まったそうじゃきん。そろそろ出発出来るきに。オーディは出立の支度をしちょる」
「そうですか、やっと『白の塔』に……」
 まるで溜息のような深い息を吐いたケルケは、感慨深そうに言った。『白の塔』に行く為にムルトエからわざわざこんな辺境の地までやって来たのだ。ケルケの目的がようやく叶おうとしている。
「なんちミルっちは連れてかん、ってオーディが言いおったぞ」
「ちょっ! なんでだよ! 俺だけ除け者?」
「子供の体力じゃ、『白の砂漠』は無理じゃろと気を利かしちょるんじゃい」
 『白の砂漠』がどういう場所なのか、これまでの道中、オーディから聞かされていた。
 魔獣すら住めぬ、真っ白な砂の砂丘が延々と続く死の大地。エルト砂漠に植生する輝薔薇でさえも育つことを許されぬ砂地獄。砂を食べるといわれるウーパでさえ、その白き砂を食すことは出来ないという。
 それはつまり、どうやっても生物は生きていけない場所という意味だ。
 その『白の砂漠』のどこかに、ケルケが求める『白の塔』があると考えられている。
「『塔』の場所はオーディも確証がないらしいですからね。不毛の砂漠を探し回るとすれば、子供のミルを参加させないというのは冷静な判断でしょう」
「俺っちからみれば、オーディも充分子供じゃきに」
「そんなことを言えば、オーディは押し黙って、むすっとした不機嫌な顔になるでしょうね」
「そんなことも聞き流せないのが、子供だっていう証拠だよ」
 十になったばかりの、ミルミーアに言われてはオーディも形無しだ。
「ミルが村に残るのは丁度いいでしょう。ミル、コルッシュ。手筈(てはず)はわかってますね?」
 仄暗い地下の闇の中、ミルミーアとコルッシュは無言で首肯(しゅこう)した。


  *
 そこに着いたときは丁度夜明けだった。
 朝日から伸びる光が目の前の情景に差して、白い眼前を更に色濃く白く染めていた。
 クロファリ村から北に三日程歩けば、それまで黄を帯びていた砂漠の砂が徐々に白ずんでくるのがわかる。そして穢れを知らぬ砂が全てを覆い尽くす。
 そこより先がエルトの地に伝わりし、地神ディフェスの聖地『白の砂漠』。
 その光景を目にした者は、あまりに神々しい情景に我を忘れるだろう。
 『最も乾いた大地、エルト砂漠』という言葉が色褪せてくる。
 これまでの必死に乗り越えてきたエルト砂漠は名ばかりの砂漠だと気付かされる。
 岩地の大地。土混じりの砂礫。水が流れずとも涸れ川だってある。場所によっては水場も存在する。そして所々に乾燥地固有の動植物が生息している。そんな表情豊かな乾燥地を人は『砂漠』と呼称する。
 それが普通の砂漠だ。エルト砂漠であってもそれは変わらない。どんな不毛と呼ばれる砂漠であれ、僅かばかり植生するものはあるだろう。魔獣だっているはずだ。
 しかし、『白の砂漠』は違う。
 目に入るのは真っ白な砂。砂。砂。
 本当に砂以外に何もない。あるのは砂と空、そして昼の太陽と夜の赤月、降りしきる星々だけ。
 それこそが何人も寄せ付けぬ白き結界であり、神の聖地たる所以なのだ。
 それはまるで絵に描いた砂砂漠。そこは生き物の存在を完全に否定する空間だった。

 あまりに絶対無比の『白』を見せ付けられ吐き気がする。
 オーディ、ケルケ、コルッシュの三人は遂に『白の砂漠』に踏み込もうとしていた。
 白き砂漠を目の当たりにしたとき、ケルケ・カナトは「ここを行くんですか?」と短い言葉をこぼした。
 確認の言葉というには、あまりに弱気。それは絶望感を含んで泣き言にも聞こえた。
 村から徒歩数日の距離にあるからと、高を括っていたのかもしれない。
 しかし、何千年とこの地に住むクロエ族が近付きもしないのには訳があるのだ。その訳を我が目をもって味わった学者の気持ちは如何ばかりだろう。
 オーディはケルケの問いに、あえて応えなかった。それを望んだのはケルケ本人。オーディはその望みを叶える為にここまで来たのだ。そして、オーディ自身もこの『白の砂漠』へ再び足を踏み入れることを決意した。
 そこからの道程はこれまでのものとは趣が全く異なる。もう騎獣のウーパは使えない。『砂食い』とまで呼ばれるウーパも『白の砂漠』を嫌がって入れない。
「クロファリ村から生贄を出すときは、この辺りから人身御供を歩かせます。一日分の水と食料だけを持たせて。連れてきた者がそれを見張り、見えなくなるまで自分の足で『白の砂漠』に……」
 苦渋の表情を浮かべ、オーディは最後まで言葉を紡げなかった。
「子供一人をこなん所に置き去りとは、無体じゃきに」
 失言だったかと、コルッシュはオーディの方を振り向いたが、彼はただじっと『白の砂漠』の純白を見つめていた。
「真っ白の砂が照り返すので、昼は外の砂漠以上に暑いんです。普通の人なら一日と保ちません」
 そう言うと、オーディはこれからの行程について、確認の為に簡単な説明を始めた。
 四年前のオーディは『白の砂漠』に生贄として追放された妹を探す為に、村を飛び出してこの砂漠に入っていった。
 そのときは昼夜問わず歩き続け、そして『白の砂漠』に入って四日目に力尽きた。
 十歳の子供が四日間も生き延びられたのは、先祖返りで弱まったとはいえクロエ族の強靱な体を持っていたことと、妹を探すという強固な目的意識があってこそだ。
「移動を夜だけに限定すれば、今ある水と食料で十日は保つと思います。あとは体力次第ですね」
 灼熱の暑さを避け夜行を行うのは同じだが、これまでの砂漠には自生していた動植物は姿を消す。『白の砂漠』で水と食料の補給は絶望的だ。
 そして砂漠に咲く輝薔薇もこの場所では育つことはない。それは夜の明かりが、月明かりと星々の輝きに頼るということだ。
 自身の周りを照らすには収穫した輝薔薇の水晶を携帯すれば事は済むが、地平線にすら何も見えぬ広大な砂漠。そんな場所で暗闇の夜に遠方の標点を失い、歩き続けるというのは、目を瞑って歩くに等しい行為だ。
 方向感覚を失い、自分がどこに向けて歩いているのかもわからず彷徨い歩く。それは死の行程と言ってよい。
「十日……。復路を考えると五日程しか探せないということですね」
「直線距離ならそれほど遠くないと思います。四年前の俺が行けた場所です……」
「問題は場所じゃけん」
 コルッシュの指摘通り、この目印となるものが何もない広大な砂漠で、一つの建造物を探そうというのだ。正確な場所がわからず、一生辿り着けないことだって考えられる。
「村の伝承では『白の塔』は蜃気楼のように消えるてしまうと言われています。それだけ目にした人はいないということでしょう」
「オーディ君が塔を見たのは?」
「俺はあのとき、真っ直ぐ北に三日ほど行ったつもりでした。そのとき西の地平線に見えました。それもすぐ消えてしまいましたけど……」
「消える云々(うんぬん)を考えてもしょうがないきに。オーディの言うとることを信じるちゅうと、北北西ってことじゃけんの?」
「四年前のオーディ君はなぜ、北に向かったのですか?」
 ケルケの実に的確な質問であった。妹を探すという目的にしては、真っ直ぐ北を目指すというのは違和感を覚える。
 少し押し黙ってからオーディは口を開いた。
「もしこの砂漠に置き去りにされて、クロファリ村に帰れないとすると、生き延びる為にはどこに向かえばいいでしょう?」
 逆にオーディが問い返す。少し考えを巡らしコルッシュが「シライ関?」と答えた。
 シライ関とはケルケの母国、ムルトエ王国が国境に構えた関所だ。
 今、彼らがいる場所から遙か東、エルト砂漠の東端に存在する。
 つまりシライ関に行くにはエルトの砂漠を横断することになる。東西に長いエルト砂漠を横断するというのは、彼らがここまで来た旅路よりも遙かに長いものになる。
「いえ、それならまだクロセリカの町の方が近いでしょう。第一、シライ関からムルトエ王国には入国出来ません。あそこは流刑地への入り口ですから。入り口からは出られませんよ」
 ムルトエ王国はエルト地方を流刑地として扱っていた。重罪人を何の装備も保たせず砂漠に放り出すのだ。それはつまり死刑に等しい。クロファリの生贄にされた者と同じように。
「そうですね。距離でいえばクロファリの次に近いのはクロセリカになるでしょうね。それでも遠い……」
 やはり砂漠に投げ出された者は死ぬしかないのか。絶望しか抱けず乾いて死んでいくのだろうか。
「『白の砂漠』の北には何があるのか知ってますか?」
「それは……。北エルト高原か」
 博識なケルケ。こんな僻地の地理にも詳しいらしい。国さえない未開の地エルトだ。エルトの住民でさえ、その更に奥地に何があるのか知らない者が多い。
「いや、しかし、あの高原も人が住めるような場所ではないと聞いていますが」
「確かに、高地乾燥の荒れた土地ですけど、砂漠よりも涼しいんですよ。そして川もある」
 何かに気付き、ケルケは息を呑んだ。オーディはいつもにも増して悲しい顔をした。
「北には、俺と同じ名の川があるんです……」
 オーディ川。それは北の凍れる海であるツンレバン海に流れ込む冷たき川。砂漠に放り出された少女は、遙か北にある兄と同じ名の川を目指して歩いたというのだろうか。兄に助けを求めるがの如く。
 その真実はわからない。あるのは妹を追って北に向かったオーディが妹を見付けられなかったという事実だけだ。
「わかりました。それでは私達も北に向かいましょう。四年前の君と同じように」
 そして一行は歩み出した。地神ディフェスの聖地といわれる『白の塔』へと向かって。

 オーディにとっては二度と来ることはないと思っていた場所。悲しい記憶と不思議な思い出が残る白き砂漠。
「年々『白の砂漠』は広がっている」
 村を出るときに長老から聞いたそんな言葉が、オーディの心の奥底に魚の骨のように引っかかっていた。
 『白の砂漠』が広がっているのなら、いつかはクロファリの村も、そしてエルト地方も全部が全部、白き砂に飲み込まれるのかもしれない。
 人は地神の生贄になるのが運命なのか。
 そんな根拠のない想像が頭を離れないでいた。
  



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